菌活で広がるきのこの世界

「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!

文・写真/牛島秀爾

食用? 毒? 写真をクリック

まるで別物!野生の姿にびっくり

【エノキタケ】

 前号に続き今回も、食卓によくのぼる「エノキタケ」(榎茸)の特徴を栽培と野生の両面から紹介する。店頭に並んでいるきのこは、野生きのこを栽培しやすく収量性が高くなるように改良したものが、ほとんどである。
 エノキタケは、晩秋から春の寒い時期にエノキ・カキ・ケヤキなど多種の広葉樹から生え、木材を分解吸収して栄養を得ている。最近の研究では、私たちが普段「エノキタケ」と認識していたもの(栽培エノキも含む)が肉眼的・顕微鏡的特徴・生態的特徴ならびに分子系統学的解析結果から、3種(F. filiformisF. rossicaならびにF. fennae)に分けられることが明らかになったが、これらを肉眼的に識別することはかなり難しい。鳥取県でも、市街地の街路樹などに生えるもの、ブナ・ミズナラ林帯のヤナギなど(かん)(ぼく)に生えるものなど、見た目や生態が異なるものがいくつかあり、今後詳しく調べる必要がある。いずれにしても、市街地や山の中でも道端など目につきやすい場所で見つけられる。

 一般的に野生のエノキタケは、褐色のぬめりのある傘、褐色で細かい毛を密生する()が特徴だ。傘の直径は3〜5cm程度で、なかには10㎝に達するものもあり、栽培エノキタケよりもはるかに大きく、一見するとナメコのようにも見え、全く違う姿に驚くだろう。秋口は、よく似た毒きのこの「ヒメアジロガサモドキ」に注意したい。こちらはぬめりのない傘、褐色のひだ、白い繊維に覆われた柄に膜質のつばが特徴だ。

 エノキタケの栽培は瓶栽培が主流である。乳白色でモヤシのような姿でおなじみだろう。生産量のトップは長野県。元々は暗所で栽培していたが、近年は明るい場所でも色がつかない白色系の品種が普及している。柄を長くするために、瓶の口に紙巻きをするのが特徴。最近は、褐色系の品種が「ブラウンえのき」や「柿の木茸」などの商品名で出回っており、人気の高さがうかがえる。

 エノキタケは、GABA(ギャバ)(※)を多く含み精神的な安定や血圧上昇の抑制、またダイエット効果などが期待されている。くせがないので、炒め物、煮物、汁物など、どんな料理にもよくあう。特に栽培エノキタケは、束になった柄の根本がホタテの貝柱のような食感を楽しめるので、おすすめだ。

 きのこは食物繊維が野菜よりも豊富で、ビタミンなどの栄養素も含むので、普段の食事をおいしくヘルシーにできる。ぜひ、実践してほしい。ただし、野生きのこを食する場合は細心の注意を払おう。

※GABA=天然アミノ酸のひとつ。γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略。

『きのこ図鑑 道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活』

著者:牛島秀爾
出版社:つり人社
発行日: 2021年
サイズ:A5判(ページ数128ページ)

■このコラムに登場するきのこも紹介されています。

【Profile】
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真

(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。