菌活で広がるきのこの世界

「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!

文・写真/牛島秀爾

食用? 毒? 写真をクリック

秋を彩る人気もの

【シイタケ・アラゲキクラゲ・ナメコ】

 今回は、食卓によくのぼるきのこ3種を「栽培」と「野生」の両面から、その特徴を紹介する。きのこは、食物繊維やビタミン類に富む食材で、店頭でも多くの種類を見かける。そのほとんどは「野生」のきのこを栽培しやすく収量性が高くなるように改良した「栽培」きのこである。栽培方法は、簡単に言うとおがくずと米ぬかを混ぜて固めた「菌床(きんしょう)」に種菌を接種。温度や湿度など環境管理された施設で培養し、大量に均質なきのこを発生させる。

 野生のシイタケ(椎茸)は、和名のとおりシイノキのほかミズナラやコナラなどの枯れ木から、春と秋に発生する。栽培は菌床と原木の2種類があり、前者は上述の方法で、後者は野生と同様に木材を使用。コレステロールや血圧を抑え、血液をサラサラにする効果が期待できるほか、がん治療の薬にも利用された。ちなみに、私の所属する「日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所」では、〝(たけ)(おう)〟や〝のとてまり〟などいわゆるブランド椎茸と呼ばれ有名な、冬〜春の大型厚肉品種「(きん)(こう)115号」や、春〜秋の大型品種「菌興240号」など14品種を開発、実用化している。

 野生のアラゲキクラゲ(荒毛木耳)は、まるで人間の耳のような形をしており、極めて弾力がある。春から秋、広葉樹の枯れ木から生え、赤褐色や黒褐色など色もさまざま。菌床栽培は鳥取県が生産量日本一であり(R3年度)、長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」のちゃんぽんの具材としても本県産が使用されている。

 野生のナメコ(滑子)は、夏から秋にかけて、特に湿気を好むので苔むした倒木や川辺で見つかりやすい。独特の粘液(ぬめり)をまとい、大きいものだと傘が10㎝にも達し、肉厚で味や香りもいっそう強い。栽培ナメコは、一般的に傘が開く前の(よう)(きん)を収穫しているが、煮込むだけで十分ぬめりと食感を味わえる優れもの。栽培キットも売られているから自宅で挑戦してみても良いだろう。面白いほど収穫できる。

 普段の食事にきのこを取り入れることで、風味も栄養も満点のバランスの良い食生活〝菌食〟が簡単に実現できる。ただし、野生きのこを食する場合は細心の注意を忘れずに。

 

『きのこ図鑑 道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活』

著者:牛島秀爾
出版社:つり人社
発行日: 2021年
サイズ:A5判(ページ数128ページ)

■このコラムに登場するきのこも紹介されています。

【Profile】
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真

(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。