「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!
文・写真/牛島秀爾
おとぎ話から飛び出した愛らしさ
【タマゴタケ(卵茸)】
人は派手な色の生物に遭遇すると「危険!毒!」と、なぜか警戒するものである。キノコも同じく、猛毒の「カエンタケ」や「ベニテングタケ」は目を引く赤や黄色をしている。しかし、カラフルな色のものが毒というばかりでもなく、むしろ地味なものが猛毒だったりする場合もある。見た目で判断してはいけない。
その代表ともいえるのが「タマゴタケ」。夏から秋にかけてブナ科の樹木を主体とする林に生え、鳥取県では里山のクヌギやコナラ、アカマツなどの雑木林から標高800 m前後のブナ、ミズナラ林まで幅広く分布する。毒々しい見た目をしているが、実はとても美味。バターで焼くと、カマンベールチーズのような独特の風味が楽しめるので、ワインやウイスキーと一緒に食べるのもよい。
「タマゴタケ」の名の通り、始めはまるで卵のような5㎝程度の白い袋状のツボに収まっており、徐々にこのツボを破って、鮮やかな赤い傘と黄色の柄が現れる。傘の裏にあるヒダは黄色の被膜に守られているが、傘が開くにしたがい縁から剥がれ、ツバとして柄の上部に垂れ下がる。柄が伸びてくると表面には橙色のマムシ模様が現れ、一層個性的な姿に。愛らしい形や色と相まって、まるでおとぎ話に登場するキノコのようだ。
成熟すると、傘の直径は10㎝前後、柄の長さは15㎝前後になる。傷みやすいため一般にはほとんど流通しないが、登山道脇など身近な場所に生えるので、出合えるチャンスは意外とあるかもしれない。
『きのこ図鑑 道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活』
著者:牛島秀爾
出版社:つり人社
発行日: 2021年
サイズ:A5判(ページ数128ページ)
■このコラムに登場するきのこも紹介されています。
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真
(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。