画家・池平徹兵さんに聞く

縁あって『とっとりNOW』の表紙を126号(2020年6月1日発行)から描く画家の池平徹兵さん。鳥取砂丘や大山など鳥取県の風景を舞台に、植物や生きものを絡ませ、独創的なストーリーを展開する。池平さんに制作への思いや展望を聞いた。

池平徹兵
画家・池平徹兵さん

1.画家になるきっかけは何ですか

幼稚園を卒園する頃には画家になると決意。でも画家は職業として難しいと知り、大学では体育教師を目指していました。教育実習の時、教師をしながらでは僕の目指す画家にはなれないと思い、友人たちが就職活動をする中、島根県立美術館で初個展を開催。周囲の反対を押し切るため、画家を目指す人ではなく突然画家になる必要があったからです。 奇跡的にそれからずっと画家です。画家は制作し続けなければ生活できません。でも描きたくないのに描くと絵は死んでしまいます。毎日「描きたい自分を作る」ことに最大の努力を注いでいます。

2.制作の様子を教えてください。

完成イメージを決めず、毎日最も描きたいものをキャンバスに加えます。やがて自然界の景色のように、全てが主役の世界が出来ていきます。制作は朝。毎朝新鮮なひらめきを収穫して、午後は明日の〝自分作り〟をします。食事と睡眠は必ずとります。僕の目指す場所は、寿命を最大に伸ばしても到達できるかどうか紙一重の場所だと感じているからです。芸術とは、その人にしか感じられない感覚を他の人にも感じられるようにするもの。まだ誰にも見えない世界を見えるようにするのが画家の仕事です。それが自分の中に埋まっていることを僕は自覚していて、それを全力で発掘し続ける毎日です。

3.画家以外の活動もされていますね。

 大学時代、青の画家としてデビュー。それから、何色を使っても何を描いても何をしても「僕は僕」、そういうアーティストを目指してきました。それがファッションや絵本作家などさまざまな仕事につながっています。
我が子が生まれた時、僕の絵に落書きをしても怒るのではなく「良くやったね。ありがとう。」と言える〝自分作り〟を決意。それがたくさんの人を必要として作品を作るワークショップにつながりました。なかでも、米子市で開催した「世界で一冊の絵本を作ろう」(※)は、今でも僕の最高傑作のひとつです。絵に限らず多様な活動の中で行っていることは、どんなに苦しい時も全ての日々を必要として「明日を作ること」です。

※「世界で一冊の絵本を作ろう」:約100人が描いた絵をつなげて1冊の絵本にまとめるワークショップ(2018年3月)
https://www.city.yonago.lg.jp/23544.htm

池平さんの作品、『視界の外が呼吸する』
池平さんの作品、『視界の外が呼吸する』

制作風景。我が子もお手伝い
制作風景。我が子もお手伝い

4.『とっとりNOW』で表現したいことは

鳥取には大学の頃から今日まで多くの思い出があり、描きたいものはたくさんあります。僕はどんな時も世界記録を狙っています。ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、モネの『睡蓮』、ピカソの『ゲルニカ』、画家としてそういう一発を打てるチャンスを常に狙っています。それが『とっとりNOW』の表紙であってもです。次号は「大山」を描きたいと、今からそのためのコンディション作りをすでに行っています。 こうしてこれまでお世話になってきた鳥取の皆さまに恩返しできることをとてもうれしく思っています。これからも僕の描く鳥取を楽しみにしていてください。

写真提供/池平徹兵

【プロフィール】

1978年福岡県生まれ。島根大学卒。東京オペラシティアートギャラリーProjectN、岡本太郎現代芸術展、VOCA展などに出展。全てのモチーフを本当に描きたい気持ちで描くことを追求している。